WORK × LIFE STORY
私はもともと25年ほど、栄養士として働いていました。大学の学食で毎日何百食も作ったり、大手企業の社員食堂を任されたり。常に「人に食を届ける責任」を感じながら仕事をしてきました。料理を作ること自体も好きですし、栄養士という仕事に誇りを持っていたのは確かです。
ただ、長く働くうちに少しずつ、気持ちに変化が生まれてきました。「毎日毎日、なぜ料理を作り続けているのだろう」—。そう考えることが増え、同じ日々の繰り返しに、どことなくマンネリを感じるようになっていたんです。
その後、会社の事情もあって栄養士の仕事を退職することになりました。次の仕事を考えたとき、「これを機に新しい環境に挑戦してみよう」と決心したんです。当時は40代半ば。決して若いとは言えない年齢で選んだのは、まったくの未経験だった物流業界でした。食品を扱う運送会社に配車担当として入社。異業種に飛び込むのは勇気がいることですが、新しい知識にふれる毎日はむしろ新鮮で、「年齢は関係ない。自分はまだまだ成長できる」と感じていましたね。
そして数年後、縁があってSBSロジコムに移ることになりました。50歳目前での転職も、私にとっては「自分の可能性をさらに広げる大きな一歩」です。間違いなくこれから成長していく会社に身を置き、自分もその一員として力を尽くせる。当時、その挑戦を前向きに受け止められたからこそ、今のやりがいにつながっているのだと思います。
SBSロジコムに入社しておきた一番大きな変化は、自分自身が直接お客様と交渉したり、協力会社の方とやり取りするようになったことです。以前は、そうした折衝は上司が担い、私は事務所で配車組みに集中。どうしても似たようなスケジュールになってしまう毎日で、どこか物足りなさを感じていました。
しかし、今は配車だけでなく「この条件ならお客様も納得してくれるだろう」と考えて交渉したり、ドライバーさんと直接話して現場の状況を把握したりと、自分が関わる領域がぐっと広がりました。最初はカバーする範囲の広さに戸惑いもありましたが、自分の判断や工夫で仕事が前に進んでいくという実感は、求めていたやりがいそのものでした。
時にはピッキングを手伝いに、現場へ出ることもあります。実際に商品を仕分けながら、「こうやって積み込むのか」と理解できると、机の上だけではわからない現場のリアルが見えてくるんです。そうした経験を重ねることで配車の精度が上がるだけでなく、組み方にも説得力が増してくると考えています。
お客様の要望とドライバーの都合、そして法律で定められた拘束時間。あらゆる条件を考慮しつつ最適なスケジュールを探るのは、まさにジグソーパズルのよう。思った通りにピタッとはまらないこともありますが、試行錯誤を重ねてきれいに組み上がった時の達成感は格別です。責任は増えましたが、その分仕事の面白さも大きくなっていると感じます。
現在勤務している支店では、主にグラニュー糖を専門に運ぶバルク車などの配車を担当しています。バルク車は液体や粉体をタンクで運ぶ特殊な車両。車両への充填から納品まで、独特の手順やルールが存在します。私がこの業務を担当するようになったのは最近のことで、覚えることがとても多く、最初は戸惑いもありました。
業務を進める中で強く感じているのは、ドライバーさんの存在の大きさです。長年バルク車を担当してきたベテランの方々は、業務を熟知されていてとても頼りになる存在。日々のやり取りの中で「こうした方が効率的だよ」と教えていただけることも多く、経験に裏打ちされた助言にはいつも助けられています。そうした声を大切にしながら、ドライバーさんが安心して働ける環境をつくること。それが自分の役割だと考えています。
バルク車のような特殊な車両の難しさは、衛生面と時間管理です。材料を直接タンクに充填するため、作業環境は非常に厳格。帽子や専用の服を着用するなど、異物混入を防ぐためのルールが徹底されています。また、充填作業には準備から後片付けまで1時間以上かかることもあり、単に移動時間だけでなく、こうした工程も含めてスケジュールを組まなければなりません。法律で定められた拘束時間との兼ね合いも難しい部分ですが、安全に、そして確実に届けるため、一つひとつの判断に細心の注意を払っています。
実は私、人と話すのがあまり得意ではないんです。でも、配車の業務で欠かせないのは“連携”で、お客様やドライバーさんとは細かなやり取りが求められる仕事。性格的には大きなギャップがありますが、だからこそ「どうすれば正しく伝わるか」を、常に意識するようになりました。
特に気をつけているのは、言葉の選び方です。配車の指示が曖昧な表現では、誤解やトラブルを招きかねません。過去に自分では伝えたつもりでも、相手に正しく届いていなかった経験があり、それ以来「誤解を生まないよう、分かりやすく、正確に伝える」ことを心がけているんです。
コミュニケーションに対する苦手意識が消えたわけではありませんが、それ以上に「人と向き合うことで仕事が前に進む」という実感に支えられています。これからもドライバーさんが安心して働ける環境を整えながら、自分自身も成長し続けていきたいですね。
もう1つ大切にしているのは、「仕事もプライベートも、時間を無駄にしないこと」です。休日は掃除や洗車、メダカの世話をする時間を楽しんでいます。洗濯機の裏や換気扇を徹底的に掃除したり、週に一度は車を磨いたり。メダカは妻が知人からもらってきたもので、今では50匹ほどに増えました。仕事に向かうエネルギーは、プライベートの充実があってこそ。こうした何気ない日々を大切に、これからも過ごしていきたいです。
私は50歳を過ぎてから、SBSロジコムで新しいやりがいに出会いました。若いころとは違い、年齢を重ねてからの挑戦は勇気が要ることです。ですが、挑戦することでしか見えない景色があるのも事実。同世代の方にも「まだまだ遅くはない」と感じてもらえたら、とても嬉しく思います。
(インタビュー取材 2025年9月)