WORK × LIFE STORY
私は根っからの車好きで、昔からドライバーになりたいと思っていました。特に小学生の頃から父に連れられて、映画『トラック野郎』シリーズを見ていた影響は大きいです(笑)。
高校卒業後は友人に誘われて配管工の仕事に就きましたが、やはり夢が捨てきれず、ドライバーになるため転職したんです。その会社では、2tトラックと4tトラックを運転していたのですが、泊まり勤務が月10日ほどあったため覚束ない生活が続き、数年ほどで退職しました。
そんな時、父から「牽引と大型の免許を取ってこい。そしたら俺が仕事を教えてやる。」と言われたんです。父はSBSロジコム(当時:相鉄運輸)に勤務する36tトレーラーのベテラン運転手でした。大変な仕事だということは知っていましたが、家族を安定して養っていける会社ということは分かっていましたし、念願だったトレーラーの運転経験が出来るならばと、迷いなく入社を決めました。
入社する前は、深夜に出勤する父の姿を見て、「大変だな」くらいにしか思っていませんでしたが、入社後はその苦労を身をもって理解しました。以前乗っていたトラックとは積載物や固縛の手順、配送距離まで全く異なっていて、最初の3ヶ月ほどはかなり苦労しましたね…。
入社後は、父と父の同僚からトレーラードライバーの仕事について教わりました。運転技術もそうですが、当時はスマホもカーナビもなかった時代なので、父が手描きの地図を毎日渡してくれたり、仕事が終わって自宅で晩酌しながら安全な荷物の積み方や運び方について丁寧に教えてくれたり。この指導がなかったら、自分はこの仕事を続けられていなかったと思います。トレーラーに乗り初めて20年以上経った今では、そんな父に対して尊敬の思いしかありません。
今担当しているのは入社当初から変わらず、トレーラーでの鋼材や機械部品の運搬が中心です。具体的には鉄のコイルなど、様々な形状の原料を製鉄所から加工場に運んだり、機械の修理部品などを構内の指定場所に移動します。
父はよく「トレーラーの運転手は、1人が気が合う仕事だ」と言っていました。実際、トレーラーの運転は長時間1人で過ごすことが多い仕事です。朝出社したら、同僚と軽く雑談して伝票を受け取り、アルコールチェックを済ませて出発すれば、そこからは1人の時間です。一日の勤務時間のうち、人と接するのは合計しても5〜10分くらいですかね。なので、人間関係に疲れやすい人や、コミュニケーションが苦手だと感じている人にも合う仕事だと思います。クレーン作業でも作業員と口頭でやり取りすることがなく、車両の番号札を見せるだけで荷物の積み下ろしが行われます。休憩を取るタイミングも全て自分次第、けっこう自由度の高い仕事なんです。
トレーラーでの仕事が初めての人がよく驚くのが、「固縛」の手順の多さです。ラッシングベルトやチェーン、ワイヤーなどを使って荷物をしっかり固定するのですが、安全を最優先にするため、作業には想像以上に手間と時間がかかります。また、荷物を積んだトレーラーの総重量は、ミニバン15台分ほどになります。絶対に万が一のことがないよう、運転にも作業にも「丁寧さ」が常に求められます。
重労働と言えるのは荷物へのシート掛けでしょうか。シートは1枚で25〜35kgほどあり、雨で濡れると50kg近くになることも。とはいえ、膝まで持ち上げてから太ももに乗せて上げるなど、コツを掴めば負担を減らすことができます。
最初のうちは覚えることも多くて大変かもしれませんが、焦らず少しずつ身につけてもらえたらいいんです。私はもともと車が好きなので、トレーラーの運転そのものも楽しんでいます。狭い工場などにうまくバックで入れた時なんかは、ちょっとした達成感があるんですよね。そういうやりがいを少しずつ見つけていけると、仕事そのものがどんどん面白くなってくると思います。
思い返すと、入社当初から周りのドライバーも事務所の人も、皆優しかったですね。特にここ15年くらいは、どこの会社でも親切な人ばかりですよ。気が荒いような、いわゆるオラオラ系の人は見なくなりました。初めての配送先で手順がわからない時には、他社のドライバーが親切に教えてくれたり。集荷先の工場から同じ配送先に向かう時は、先に着いた人から状況を教えてもらうこともあります。たとえ他社のドライバーでも、同じ荷物を扱う仲間として、やっぱりお互い気持ちよく仕事するのが一番ですからね。
私が所属する支店には、最近30代の若手が新たに入社していますが、しっかり意見を言ってくれてますし、相談しやすい環境だと思います。仕事を覚えるまでは大変ですが、先輩たちも気さくだし、どの世代でものびのび働ける、居心地の良い職場なんじゃないかな。
結局のところ、お客様側がコンプライアンスを意識するようになったことで、運送会社側もそれに応じて職場環境やマナー、ルールの整備が進み、私たちドライバーの働き方や考え方も自然と変わっていったんだと思います。今は安全のために一部工場内では運転中もヘルメットの着用義務があったり、積載量が500gでもオーバーしていれば、走ることはできません。
ただ、厳しくなった一方で、高速道路を使って運ぶことが当たり前になったりと、効率化が進み、身体的な負担が軽減された側面もあると思います。法令遵守や安全面でのルールは以前より厳しくなっていますが、その分「安全に、安心して働ける環境」が整ってきているとも言えますよね。そういった変化のおかげで、長く続けられる仕事になってきたんじゃないかと感じています。
それに、SBSロジコムの方針としても安全が第一なので、急ぐ理由が一つもないんですよ。追い越しを1回するのも、2回の車線変更が必要になり、その分危険が増えるじゃないですか。なので私は「おじいちゃんのような穏やかな運転」を目指しています。急ブレーキ・急発進など「急」のつく動作もしませんし、班長として若手に教えるときも、「速さより丁寧さ」ということを伝えています。
仕事の日は家族全員が私の活動時間に合わせて動いてくれます。例えば、夜中24時頃に起きると伝えれば、私が早く寝られるよう妻は夕方4時に夕食を用意してくれたり、子供たちも学校から帰って汗だくなのに、お風呂に入る順番を譲ってくれたりします。
仕事と生活を両立させるために心がけているのは、毎日1回は家族で食卓を囲むことです。子供たちが不在の日もありますが、妻とは必ず毎日2人で食卓を囲んで乾杯しています。仕事のモチベーションにもなっていますし、家族がいてくれるから頑張れるんだと思って、気持ちがキュッと引き締まる瞬間です。それから、仕事でバテない体力作りとして、筋トレもしています。もともとは家族にお腹が出てきたとを指摘されたのがきっかけですが(笑)、腕立て・腹筋・背筋・片足スクワットを一日おきに200回ずつ、10年以上続けてきました。
休日は料理以外の家事を積極的にするようにしています。平日はいつもやってもらってるので、自分が休みの日くらいは、妻が家事に触れなくて済むようにしてあげたいと思ってるんです。たまに友人家族と集まってバーベキューをしたり、休みが取りやすい環境なので、子供たちが小さい頃は学校行事にも100%参加してましたね。子供たちの成長をしっかり見守ってこられたおかげで、まっすぐ育ってくれましたし、家族の絆も自然と深まっていったように感じています。
こうして振り返ると、家族の存在がずっと自分の背中を押してくれていたんだなと実感します。若い頃は父に仕事を教えてもらい、今は妻と子供たちに支えられ、家族のおかげで自分は働けているんだなと、心から思いますね。本当に感謝の気持ちしかありません。私の今の目標は、家族のために定年まで無事故・無違反で頑張っていくことです。最低でも子供が巣立っていくまでは、トレーラーに乗り続けていたいですね。
(インタビュー取材 2025年6月)